家庭や工場などから出た汚水ってどうなって浄化しているだろうと疑問に思ったことはありませんか?
下水はバクテリアなどの微生物できれいになっています。
日本では、水道水をそのまま飲んでも問題ないと言われるほどきれいな水が存在しますが、使うと同時に不純物が含まれた水になります。
そのような汚水は様々な過程、方法を経てきれいな水になり、私達の元へ運ばれます。
その過程の中で微生物などの(※)バクテリアが汚水の中の汚れを食べてきれいな水にしてくれます。
(※)バクテリア:1つだけの細胞からなる生物。微生物の一種。細菌。
今回は、「バクテリアの働きを利用した汚水の浄化方法」や「バクテリアそのもの」について詳しく説明していきます!
下水処理施設では【活性汚泥法】という方法で汚水をきれいにする
「活性汚泥法」は様々な下水処理方法の過程の中の1つです。
では、最初に下水処理の6つの順序を大まかに説明していきます。
沈砂池
私達が使った水は排水溝を通って下水管に流れこみ地面の下を通り、下水処理場にたどり着く。
→下水処理場に着いた水はまず、沈砂池に集められ、大きなゴミを取り除き、砂や土を底に沈める
最初沈殿池
沈砂池で沈まなかった小さなゴミや砂を、この池でゆっくりと流れている間に時間をかけて底に沈める。
反応タンク
反応タンクに運ばれた水は、たくさんの微生物を含んだ泥を混ぜ合わせる。
→ゴミを好物とする微生物が水の中の汚れを食べ、倍殖する。
→水はどんどんきれいになっていく。
最終沈殿池
微生物は人間や動物と同じで食べた分重くなる。‶倍殖+微生物の重さ″で泥は底に沈む。
→沈んだおかげで上澄みはきれいな水になる。
消毒施設
きれいになった水はプールなどで使われる塩素という薬品を加えて殺菌消毒する。
汚泥処理
浄化処理をした後に残ったゴミや汚れがタンクや池の底に泥となって沈んでいるのを‶汚泥″という。
この汚泥をそのまま放置すると、とても臭く汚く周りの環境も汚くさせるので、地下のパイプを通って全ての汚泥を処理施設に集められる。
→汚泥はリサイクルされる。
リサイクル例
・野菜や果物の栽培の肥料にする
・燃料に変えて発電に利用する
・車の燃料にする
これら6つの下水処理過程の中で、「活性汚泥法」は反応タンクでの処理中に用いられる方法です。
「活性汚泥法」について
〇活性汚泥法とは?
微生物を大量に含んだ泥に空気を入れて、微生物を活性化させる方法です。
〇ナゼ空気を入れるのか?
酸素を入れることにより微生物は活発に元気にさせ、モリモリとゴミや汚れを食べてもらうためです。
※熱帯魚の水槽にブクブクとエアーポンプで酸素を送ると魚たちが元気になるのと同じです。
下水処理のなかで‶汚水からきれいな水″にするという部分では、「活性汚泥法」は一番重要なポイントですね。
全体的な下水処理の流れをより詳しく知りたい方はこちらの動画がオススメです。
(※こちらの動画では‶反応タンク″ではなく、‶生物反応槽″と表していますが意味は同じです。)
バクテリアの中には、好気バクテリア、嫌気バクテリアがいる。
先ほどの説明の中にも微生物は何度も出てきましたが、そんな微生物の一種、バクテリアには「好気バクテリア」と「嫌気バクテリア」の2つの性質があります。
好気バクテリアとは
エネルギー代謝において酸素を必要とし、酸素を取り入れることにより、生育、倍殖する。酸素があるところに存在する。
嫌気バクテリアとは
エネルギー代謝において酸素を必要とせず、酸素が無くても生育、倍殖する。
酸素がないところに存在する。
バクテリアの生息地
「土、森、動植物、川、海、沼、雪の中、空気中、肌、服、髪の毛、布団、お風呂、壁、床」など自然界や私達の生活のありとあらゆる場所に生息しています。
また、「地下5,000mの土壌の中、100℃を超える熱湯の中、水深6,000mの水底、地上から5,000mの上空」にも生息しています。
地球全体を通してバクテリアは広範囲に存在します。
バクテリアは風にのってどこまでも飛んでいきます。
水中で泳ぐことができるバクテリアもいますが、多くのバクテリアは流れに身を任せて漂います。
どこかにたどり着いた時、その場所がそのバクテリアにとって適した環境であれば増殖を始め、その環境の場所に変化をもたらします。
例えば、お風呂場や洗面所の黒カビ、時間の経った食べ物や飲み物が悪くなる、ケガや傷が炎症を起こし膿んでくる、などこれらはバクテリアが原因で起こっています。
流れにゆだねてやってきたバクテリアが壁や床、食べ物、肌に付着しているからです。
しかし、たどり着いた場所が生きる条件に合わない場合は死んでしまいます。
『酸素があるところに存在する好気バクテリアは、地中や海中など酸素がない場所では死んでしまう』という事です。
好気バクテリア、嫌気バクテリアの働きは?
好気バクテリアの働き
好気バクテリアは「有害なアンモニアを、まだ害のある亜硝酸に分解、次に害の少ない硝酸塩に分解する」働きがあります。
アンモニア ⇒ 亜硝酸 ⇒ 硝酸塩
毒性あり > 毒性あり(まだ有害) > ほぼ毒性はないが多すぎると生体に影響
嫌気バクテリアの働き
嫌気バクテリアは「硝酸塩を窒素に分解する」働きがあります。
好気バクテリアが硝酸塩まで分解後、嫌気バクテリアの出番になります。
嫌気バクテリアは硝酸塩の有機物を食べて窒素まで分解し、最後に窒素は大気中に放出されます。
「アンモニア」、「亜硝酸」、「硝酸塩」は『窒素化合物』なので最後に残る物質は窒素なのです。
自然界の川や海では、好気バクテリアと嫌気バクテリアの働きで循環サイクルができている
好気バクテリアと嫌気バクテリアの循環サイクル
好気バクテリアと嫌気バクテリアの適した環境に沿って両方の働きを利用しています。
様々なバクテリアの活躍
バクテリアは川や海をきれいにしてくれるだけではありません。
バクテリアは様々な場所で活躍したり、利用されています。
例:
・動物や海洋生物の死骸や糞の処理
・水槽の中の浄化商品
・トイレの洗浄剤
・掃除用除菌ウォーター
・クジラの骨格標本の作製に利用
地球には数えきれないほどの生物が生きて、死んでいきます。なのにどうして死骸や糞で溢れないのかというと、バクテリアが食べて処理してくれていたからなんですね。
また、バクテリアの洗浄能力を活かした商品は私達の生活の中で手助けをしてくれています。
そして、バクテリアを利用している中でも「クジラの骨格標本」はかなり大掛かりな活躍の場です。クジラの骨格標本の作製期間はクジラの大きさにもよりますが約3年もかかると言われています。
クジラの死骸は土の中に埋められ、バクテリアを利用して皮膚や肉、内臓など骨以外を分解させて白骨化させます。その白骨を骨の部位に分けて砂の中に埋め、3年後に発掘されます。
このように、骨格標本の作製にはバクテリアは欠かせません。
まとめ
・汚水は下水処理施設で「活性汚泥法」という下水処理方法でバクテリアを利用して浄化している。
・バクテリアには「酸素のある環境に存在する好気バクテリア」と「酸素のない環境に存在する嫌気バクテリア」の2つの性質がある。
・好気バクテリアは「害のあるアンモニアを害の少ない硝酸塩に分解」する働きがあり、
嫌気バクテリアは「硝酸塩を窒素に分解」する働きがある。
・好気バクテリアと嫌気バクテリアの働きで自然界の川や海の浄化、生物の死骸や糞などの処理などを
きれいにしてくれる。「バクテリアは地球のお掃除屋さん」と呼ばれている。
バクテリアは目に見えないほど小さいですが、私達の周りに存在して地球環境の循環サイクルを
成り立たせてくれています。
ですが、環境問題が年々深刻になっているので、きれいな水を保てるよう私達が環境を汚さないように
気をつけていきましょう。